integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

氷点

 

タイトルについて


「朝日新聞」2014年6月28日の記事「小説「氷点」、原案は「風」 三浦綾子の創作ノート確認では、原題が「風」であることが3冊の創作ノートで確認できたと報じられた。この創作ノートは2014年7月1日~三浦綾子記念文学館の企画展示で閲覧することができた。


1963(昭和38)年 41歳
1月22日、光世がバス停で『氷点』というタイトルを思いつく。

※拙ブログのこの記事では、当初光世がタイトルを思いついた日にちを1月12日としていたが、2014年4月21日に「1月22日」と訂正した。理由は以下のとおりである。

まず、1月12日については、 『「氷点」を旅する』に収録された光世の随筆「小説「氷点」に思う」には次のような記述がある。

 タイトルを「氷点」と提案したのも私(※引用者注:光世)である。一月十二日の朝、通勤の途次、私は乗り換えのバス停で、
 (今朝は、氷点下何度くらいかな…)
 と辺りを見まわし、
 (氷点下……うん、綾子の小説、氷点はどうか)
 と思ったことがきっかけであった。
 その日、帰宅して、
 「綾子、その小説『氷点』というタイトルにしてはどうか」
 途端に綾子は声を上げ、
 「あら、素敵ね。さすがは光世さんね」
 と、大いに感服してくれた。綾子が「さすがは」と言ったことなど、すっかり忘れていたが、昨年何かの資料を探していて、偶然そんな記録を見つけた。

1月22日とするのは、『ごめんなさいといえる』(小学館)に併録された1963年1月22日の光世の日記には次のようにあるからである。

朝、綾子の小説の題、発案。
「氷点」綾子曰く「スバラシイ題デス。さすがはあなたです。」

 

初出


「朝日新聞」1964年12月9日~1965年11月14日に連載。

 

単行本

朝日新聞社版(1965年)

1965(昭和40)年11月15日発行、朝日新聞社
B6判、厚紙装、カバー、オビ
415p ; 19cm
380円
装幀:福田豊四郎
収録:氷点

 

オビ

オビ

ベストセラーズのトップに立つ問題作
NETテレビドラマ化・大映映画化
大雪山の雪よりもつめたく、人の心の凍えるときがある。不信と偏見のなかであくまで生き抜こうとするけがれなき少女陽子の心は……北海道旭川を舞台に人間の原罪を描いてあたたかい涙と新鮮な感動を誘う
朝日新聞社刊
380円

オビ・背

朝日新聞社一千万円当選小説

 
画像
氷点 (1965年)

氷点 (1965年)

 

 

綾子から光世への献辞

 綾子は、夫の光世に対して次のような献辞を書いている。

 

神の与え給うた
わが夫三浦光世さまへ

いいつくしがたき

感謝と愛を持って

この本を捧ぐ
     綾子

 

 

氷点(新装版/1970年)

1970(昭和45)年6月1日発行、朝日新聞社
厚紙装、カバー、オビ
415p ; 19cm
520円
装幀:福田豊四郎

 

オビ

(オビ)
明るい光の道を歩む 清らかな少女陽子にも 心の底まで凍てつくような「氷点」があった
神の愛 人の原罪
人間の生の原点を鋭く問う三浦文学の最高傑作
(オビ背)
普及の名作 

 
画像 
氷点 新装版

氷点 新装版

 
 
 
 

文庫本

朝日文庫版

『氷点』(上・下)1978年5月20日、朝日文庫、朝日新聞社
上:
344p;15cm
340円
収録:氷点

下:
348p;15cm
340円
収録:氷点/解説(水谷昭夫)

 

氷点 上 (朝日文庫 み 1-1)

氷点 上 (朝日文庫 み 1-1)

 

  

氷点 下    朝日文庫 み 1-2

氷点 下  朝日文庫 み 1-2

 

 

角川文庫版(1982年)

 

『氷点』(上下)1982年1月30日、角川文庫、角川書店
上:368p;15cm
460円
収録:氷点

下:371p;15cm
460円
収録:氷点/解説(原田洋一)

 

氷点 (上) (角川文庫 (5025))

氷点 (上) (角川文庫 (5025))

 

 

 

 

角川文庫版(現:KADOKAWA 改版/2012年)

 

氷点(上) (角川文庫)

氷点(上) (角川文庫)

 

 

氷点(下) (角川文庫)

氷点(下) (角川文庫)

 

 

三浦綾子作品集 

『三浦綾子作品集 第一巻』 1983年5月25日、朝日新聞社

 

三浦綾子作品集〈1〉氷点 (1983年)

三浦綾子作品集〈1〉氷点 (1983年)

 

 

三浦綾子全集

『三浦綾子全集 第一巻』 1991年7月6日、主婦の友社
 

三浦綾子小説選集

 
『氷点 三浦綾子小説選集1』2000年12月1日、主婦の友社
 
氷点 (三浦綾子小説選集)

氷点 (三浦綾子小説選集)

 

 

三浦綾子電子全集


『三浦綾子電子全集 氷点(上)』『三浦綾子電子全集 氷点(下)』2012年10月12日配信開始、小学館ebooks

 

三浦綾子 電子全集 氷点(上) (小学館電子版)

三浦綾子 電子全集 氷点(上) (小学館電子版)

 

 

 

三浦綾子 電子全集 氷点(下) (小学館電子版)

三浦綾子 電子全集 氷点(下) (小学館電子版)

 

 

 

電子書籍

 『氷点』(上)(下)角川文庫(電子書籍)版、2012年6月22日配信開始
 
氷点(上) (角川文庫)

氷点(上) (角川文庫)

 

  

氷点(下) (角川文庫)

氷点(下) (角川文庫)

 

 

「氷点シリーズ 全4冊合本版」(角川文庫版『氷点』上・下と『続氷点』上・下の合本版)2016年1月20日配信予定、KADOKAWA

  

 

コミカライズ

木村仁(木村光久)版(1969年)

木村仁(木村光久) 原作三浦綾子 特別企画長編劇画『氷点』 「ジュニア文芸」1969年1月号(第3巻第1号~ 5月号(第3巻第5号)、小学館
※下記目次は国立国会図書館による。
1月号:特別企画長編劇画 氷点 / 三浦綾子 ; 木村仁 / 261 ~ *1
2月号:長編連載劇画(2)『氷点』 / 木村仁 ; 三浦綾子/271~ *2
3月号:長編連載劇画③『氷点』 / 木村仁 ; 三浦綾子/235 *3
4月号:氷点 / 三浦綾子 ; 木村仁/235~ *4
5月号:まんが/氷点 / 木村仁 ; 三浦綾子/235~ *5
 

志賀公江版(2007年)

初出
氷点―序章― 原作三浦綾子「氷点」角川文庫版、志賀公江作画、レディースコミック「ほんとうにあったこわい嫁・姑8月号増刊 愛のきずな」、宙出版、p3~p67(65ページ)2007年8月1日
「氷点」第1章 原作三浦綾子「氷点」角川文庫版、志賀公江作画、「最高の愛と感動11月号増刊 15の感動クライマックス」vol.6、宙出版、p325~365(60ページ)、2007年11月20日
氷点―第二章― 原作三浦綾子「氷点」角川文庫版、志賀公江作画、「最高の愛と感動1月号増刊 15の感動クライマックス」vol.7、宙出版、p327~p387(60ページ)、2008年1月20日、
氷点―第3章― 原作三浦綾子「氷点」角川文庫版、志賀公江作画「ほんとうにこわい嫁・姑4月号増刊 15の感動クライマックス」vol.8、宙出版、p279~p380(60ページ)、2008年4月1日、
氷点―第4章― 原作三浦綾子「氷点」角川文庫版、志賀公江作画、「ほんとうにこわい嫁・姑6月号増刊 15の感動クライマックス」vol.9、宙出版、p329~p388(60ページ)、2008年6月1日、
氷点―最終章― 原作三浦綾子「氷点」角川文庫版、志賀公江作画、「ほんとうにこわい嫁・姑8月号増刊 15の感動クライマックス」vol.10、宙出版、p377~p441(65ページ)、2008年8月1日、
 
コミック
氷点 (宙コミック文庫)

氷点 (宙コミック文庫)

 

 

水谷愛版

初出

 『氷点』第4話(作画:水谷愛)「Cheese! (チーズ)」2015年5月号増刊、小学館、4月10日
『氷点』(水谷愛作画)第5話「Cheese! (チーズ)」2015年9月号増刊、小学館、8月11日、※p577~609pに掲載される。
『氷点』(水谷愛作画)第6話「Cheese! (チーズ)」2015年11月号増刊、小学館、10月9日 ※p701~p733に掲載される。701p扉絵、702~703pあらすじ。
『氷点』(水谷愛作画)第7話「Cheese! (チーズ)」2016年1月号増刊、小学館、12月10日 ※p731~p763に掲載される。731p扉絵、732~733pあらすじ。*6
『氷点』(水谷愛作画)第9話、「Cheese! (チーズ)」2016年3月号増刊、小学館、2016年2月10日 ※p629~p661に掲載される。629p扉絵、630~631pあらすじ。『氷点』(水谷愛作画)最終話、4月9日(土)発行、4月10日(日)発売開始の「Cheese! (チーズ)」2016年5月号増刊、小学館 ※p357~p389、357p扉絵、358~359pあらすじ。p390はコミカライズ版『氷点』上下巻の宣伝。

 

デジタル版コミック

2016年4月22日(金)、この日よりデジタル版コミック『氷点』(三浦綾子原作、水谷愛作画)の配信が開始される。電子書籍のため価格は購入サイトによって異なる。

 

氷点(上) (フラワーコミックス)

氷点(上) (フラワーコミックス)

 

 

 

氷点(下) (フラワーコミックス)

氷点(下) (フラワーコミックス)

 

 

朗読化

ラジオドラマ化

「氷点」(102回、1966年11月1日~1967年2月末)35回、制作:ニッポン放送、 ※岩崎加根子、仲谷昇。聴取率2.4%。

 

自作解説

「自作を語る ベストセラーからの出発・氷点」NHKラジオ 聞き手・小林篤子ディレクター(1986(昭和61)年7月27日放送)

→2018年11月19日(月)、20時30分~21時00分、NHKラジオ第2「カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス」にて「声でつづる昭和人物史~三浦綾子」1放送*7

→2018年11月26日(月) 20時30分~ 21時00分、NHKラジオ第2「カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス」にて「声でつづる昭和人物史~三浦綾子」2が放送される。*8

朗読CD


『朗読CD『氷点』』2010年11月11日、制作:クレッシェンド、レーベル:ハーベストタイム
朗読:中村啓子
作:三浦綾子
CD 120分
販売格(税込): 4,000
音楽:根本正道(株式会社クレッシェンド)
構成:森下辰衛(三浦綾子記念文学館特別研究員)
制作協力:三浦綾子記念文学館
表紙題字:中西清治
表紙絵画:中西清治
 


朗読公演

2015(平成27)年5月30日(土)午後2時~3時(開場、午後1時半)
「朗読公演 作・三浦綾子 氷点」
於:響きの森文京公会堂文京シビックホール小ホール
朗読・中村啓子案内人・寺内夏樹構成・森下辰衛協力・三浦綾子記念文学館演出・根本正道映像・斉藤仁
照明・梅木信良音響・渡辺裕紀
美術・田代利之
制作・宮沢信太朗。
 

舞台化

新派

1966(昭和41)年5月3日(火)~5月27日、新橋演舞場にて上演。演出:田中千禾夫、出演:森正之、阿部洋子(夏枝)、長谷川澄子。
1966(昭和41)年8月3日~5日、新派による「氷点」舞台化、旭川国民劇場にて上演。

 

DVD

1966年版(陽子:内藤洋子、夏枝:新玉美千代) 

氷点 -昭和41年放送版- [DVD]

氷点 -昭和41年放送版- [DVD]

 

 

1966年角川映画版

「氷点」
収録時間:97分
モノクロ
主演:若尾文子
価格:税込2800円

 

氷点 [DVD]

氷点 [DVD]

 

 

2006年版(陽子役:石原さとみ)

2007年2月21日発売、「氷点 DVD-BOX」※2006年11月25、26日の2夜連続TV放送(テレビ朝日)

タイトル:氷点 DVD-BOX
形式 / 品番:DVD / VIBF-5165
発売日:2007年2月21日 
価格:¥8,208(税込)
映像特典収録
全1曲収録 279分00秒
原作:三浦綾子
脚本:野依美幸
テーマソング:元ちとせ「六歌譚」(エピックレコードジャパン)
音楽:アンドレ・ギャニオン
監督:藤田明二
出演:石原さとみ、仲村トオル、飯島直子、 手越祐也、岸本加世子
監督:藤田明二
発売元:テレビ朝日
販売元: ビクターエンタテインメント
  
氷点 DVD-BOX

氷点 DVD-BOX

 

 

補助資料

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◆補助資料 
 
 
1 辻口医院の院長夫人・辻口夏枝は、辻口医院の眼科医村井靖夫と二人きりで応接室にいた。夏枝は、村井と二人きりになりたいがために、一人娘のルリ子を部屋から出す。予定よりも早く帰宅した啓造は、夏枝の態度に村井の間に何かがあったと疑惑を抱く。息子のは「敵ってナーニ」と問う。啓造は「というのはね、憎らしい人のことだ。意地悪したり、いじめたりする人さ」と教えられて、四郎の名を出す。しかし啓造は、イエスの話をし、「汝の敵を愛すべし」という言葉を思い出しながら「敵とは、一番仲良くしなければならない相手だ」と教える。
2 誘拐 ルリ子が帰ってこないので、夏枝は探しに出かけるが、見つからない。啓造は、村井の訪問に怒りと嫉妬心を感じる。警察に誘拐ではないかと届を出し、一晩中ルリ子を捜索する。翌日午前五時すぎ、近くの特定郵便局局長がルリ子が死んでいると知らせに来た。
3 ルリ子の死 ルリ子を殺した犯人が捕まる。犯人の名は、佐石土雄という見知らぬ男だったが、留置所で自殺する。憎しみの持って行き場がない啓造は、ルリ子を殺したのは、村井と夏枝ではないかと思う。
4 灯影 啓造は、和田刑事から佐石のことを聞かされる。そんな折、夏枝の友人・辰子から佐石の娘が、啓造の友人・高木が関係する乳児院に預けられていることを聞かされる。高木は次のように言う。啓造が学生時代に「汝の敵を愛すべし」とよく口にしていたことが、犯人の子を引き取ることはできまい。啓造は一瞬、佐石の子を引き取ってみようかと思いつく。
5 西日 啓造は、村井から、辻口医院の事務員・松崎由香子について「あの子は、院長にまいっているんですよ」と聞かされ、結核空洞があると打明けられ、事務長に手続きをさせるから療養するようにと言う。
6 線香花火 夏枝が退院し、辻口家は一見元通り戻ったかのように思われた。徹にねだられ、線香花火をしている夏枝に啓造は村井が洞爺に行くことを告げた。夏枝と村井に何かがあったのかと打ちのめされる。夏枝の口から女の子が欲しいと聞かされたこともあり、啓造の頭に再び佐石の娘を引き取るという考えが頭をよぎる。
7 チョコレート 辻口家に高木がやってくる。産婦人科医のかなしい役得でチョコレートなどを辻口家に持ってきたのだ。高木は、夏枝から女の子が欲しいと言われ、手相を見てやる。夜、啓造は高木に犯人の娘を引き取りたいと相談する。
8 雨のあと 洞爺に立つ前日、村井は夏枝に挨拶に来た。激しいが降り、雨に気を取られた夏枝は、うなじに村井からキスマークを付けられる。そのキスマークを見た啓造は、犯人の娘を夏枝に相談することなく、自宅に引き取ることを決める。
9 回転椅子 啓造は、犯人の娘が欲しいと高木に相談するため札幌を訪れる。高木から反対されるが、犯人の娘にこだわる理由として、犯人を一生に組んで暮らすか、「汝の敵を愛せよ」を生涯の課題として取り組むかの二つの一つだと告げる。高木は啓造に一生秘密を守るように約束させる。
10 九月の風 啓造は、高木に電話をかけ、佐石の娘を引き取りに行く。何も知らない夏枝は、赤子に夢中になり、もらい子だとばれないようにしばらく札幌に滞在すると宣言する。赤子は夏枝により、「陽子」と名付けられた。
11 ゆらぎ 夏枝が不在の辻口家に、辰子が泊りにやってくる。啓造は事務員の松崎と並んで歩いているところを目撃した、と辰子に言われる。
12 どろぐつ 夏枝が陽子とともに帰ってきた。啓造は、陽子を愛せない自分と、「汝の敵を愛せよ」の難しさを痛感するが、ついに出生届を提出する。
13 みずうみ 陽子を引き取って7年がたった。辻口家は一家で支笏湖に遊びに来ていた。啓造は、7年経っても一度も陽子を抱くことがなかった。また、徹が小学校2年生の時に陽子と結婚すると言い出したことにも不安を感じていた。
14 雪けむり 斜里からの帰り道、高木が辻口家に立ち寄る。高木は陽子に学校の様子を聞くが、どの児童について聞いても、陽子は長所しか言わない。啓造と夏枝のことを同じように好きだという陽子に、夏枝はいささか不満を感じる。高木に誰の子かと夏枝は問うが、高木は決して漏らさない。
15 つぶて 高木の訪問から2,3日後。陽子は近所の二三夫から石をぶつけられて怪我をするが、黙っていた。黙っていた理由を聞いて、陽子は一体どんな両親の子なのかと気になる夏枝。また、啓造は陽子が恐怖や悪意を持たずに生まれてきたことに気づく。その夜、啓造はルリ子が殺された時の記事を読み、陽子の容姿が佐石に似ていることに苦悩する。
16 激流 12月中旬、掃除の途中で夏枝は啓造の日記を覗き見したことから、日記に挟まれた啓造から高木にあてられた手紙を読み、陽子が犯人の娘だったことを知り、発作的に陽子の首を絞める。
17 夏枝に首を絞められた陽子は家を出て、辰子の家に行く。辻口家では、陽子の姿が見えないにもかかわらず落ち付いている啓造に対して、徹が陽子はもらい子なのかと尋ね、啓造が陽子に対して冷たいことを指摘する。
18 青い炎 啓造は、夏枝が陽子が誰の娘であるかを知ったとは夢にも思わない。高木から村井のことで相談を受けた啓造は事務長と相談すると回答する。村井が帰ってくることについて、松崎から非難を受けた啓造は、二人の関係について疑問を抱く。
19 白い服 陽子の学芸会が近づいて来たが、夏枝は衣装の白い服を用意しない。徹は前日衣装を取りに行き、夏枝が注文すらしていないことを非難するが、夏枝は言葉巧みに徹を誤魔化す。当日、赤い服を着て踊る陽子にみなの注目が集まったが、徹は六年生の女生徒の発言から、陽子がもらい子ではないかと思う。学芸会を見に来た辰子は、徹の会話から辻口家に潜む危機に気づく。
20 よそおい 徹は、啓造に陽子はもらい子ではないかと聞く。啓造は思春期特有のかんぐりだと取り合わないが、徹の卒業文集を読んで「復讐しようとした自分が、一番手痛く復讐されることになるのではないか?」と思う。洞爺で療養していた村井が帰旭した。夏枝は身につけるものすべてを新調して村井を出迎えるが、かつてとは変わり果てた村井の姿に失望する。
21 歩調 学会が京都で開かれることになり、夏枝は啓造に一緒に行きたいとねだった。しかし、出発の二日前に、〝ちろる〟で村井と再会した夏枝は、旅行の中止を啓造に申し出る。
22 台風 啓造は、夏枝が村井との密会のために旅行をキャンセルしたことから出発予定を早めた。海難事故に遭遇する。その際、外国人宣教師若い娘に救命具を譲った行為に胸打たれ、自分の生を厳粛に受け止める。
23 雪虫 洞爺丸の遭難事故の後、函館から帰った啓造は、徹との会話から、夏枝が自分の留守中に村井と会いたいがために旅行を中止したことを知り、海難事故の体験は自分一人のものだったと孤独を感じ、富貴堂書店聖書をあがなった。
 あくる日、啓造は陽子と一緒に遊ぶが救命具を他人に譲った宣教師のようには人を愛せないと落ち込む。
 啓造は高木の訪問により、村井の結婚話を知る。
24 行くえ 洞爺丸事件から8カ月後。村井の結婚式が迫っていた。啓造のもとに松崎から電話があり、「院長先生の子供を産みたい」と告げられるが、啓造は受話器を置いてしまう。村井の結婚式の十日前、夏枝は村井の家に結婚祝いを持っていくが、村井の表情の暗さに気づく。村井の結婚式が終わった後、啓造は事務長から松崎が失踪したことを知らされる。村井は酒に酔っ払った状態で辻口家を訪れ、啓造と夏枝に松崎が啓造を慕っていたことや、自分との関係を話す。
25 冬の日 陽子は、夏枝から給食費がもらえず、学校で叱られる。その日の午後、辰子の家に行った陽子は、辰子の家の掃除をして380円をもらう。茶の間の連中の会話で、外国の子供が働いていることを知った陽子は、自分も働きたいと啓造たちに告げる。
26 うしろ姿 陽子は5月から牛乳配達を始めることになった。啓造は陽子の自立心の高さが気になる。院長室を訪問した辰子は、村井と鉢合わせになる。そのとき、昔マルキストの間に男子を産んだものの、すぐに死んだことを告白する。
27 大吹雪 冬休み、牛乳配達に行った陽子は、牛乳屋の小父さん小母さんの会話から、自分がもらい子であることを知る。
28 徹は陽子を異性として意識するようになる。啓造も夏枝も徹の異変に気づく。夏枝は、啓造と言い争ううちに陽子が佐石の娘であることを知っていると漏らし、啓造も何故陽子を引き取ったのかその理由を夏枝に告げるが、その内容を徹に聞かれてしまう。徹は陽子との結婚を宣言し、高校入試の答案を白紙で提出する。
29 答辞 陽子が卒業式の総代に選ばれた。夏枝は、卒業式当日陽子が書いた答辞を白紙とすり替える。陽子は夏枝の仕業だと悟ったが壇上に登り言葉をつづけ、賞賛を受け、「石にかじりついても、ひねくれないわ」と決意する。
30 千島から松 陽子が高校一年、徹が北大二年の夏、徹が寮で同室の北原を自宅に招く。『嵐が丘』見本林で読んでいた陽子は、林の中で北原と出会い、たがいに惹かれあう。北原は陽子に宛てて斜里からの手紙を送る。その中に「大いなるものの意志」について書き送り、陽子は感銘を受けるが、その手紙は夏枝が言葉巧みに北原からの手紙を取り上げてしまう。また、啓造は辰子から、陽子を養女にしたいと相談を持ちかけられる。
31 8月の終わり、徹は友人から車を借りて来て、陽子と二人で層雲峡に行き、一泊する。そのとき、陽子は徹に自身がもらい子であることを知っていると告白する。
32 赤い花 夏枝は札幌に帰る徹に同行して札幌に出かけたものの帰ってこない。その日の晩、陽子は啓造の患者・正木次郎自殺したことを聞き、「かけがえのない存在」になりたかったのではないかと考え、誰かに強く愛されていれば死ななかったのではないかと言う。翌日、啓造は陽子と一緒にアイヌ墓地へ行く。啓造は辰子が陽子を欲しがっていることを夏枝に告げかねていた。美しく成長し、自分に優しくしてくれる陽子を手離したくなくなっていることに気づいたからである。
33 雪の香り 元旦、北原からの年賀状が来ないことに落胆した陽子は、徹に誘われてスキーに出かける。
正月も七日を過ぎたころ、陽子は辰子の所に出かける途中で北原に会う。一緒に四条通りにあるホテルのグリルで食事をした二人は、互いの誤解が解け、文通の約束をする。
34 階段 洞爺丸事件から10年後、「この本は、本当におれに新しい生き方を教えてくれるだろうか」「あの人のように、おれは生きたいのだ」と聖書をめくり、教会に行く決心をして、六条十丁目にある教会を訪れる。だが、どうしても中に入ることができない啓造は、自身にとって説教の題にある<なくてはならぬもの>とは何かを自問しながら十字架架を見上げる。
35 写真 徹から送られてきた写真を見た陽子は、北原に恋人がいるのではないかと誤解し、北原から来た手紙を全て燃やしてしまう。
36 堤防 夏休み、徹は帰省する。陽子は徹から、卒業後の進路について尋ねられ、辰子が陽子を欲しがっていることや、夏枝が陽子を辻口家から嫁に出したいと聞かされる。徹は陽子を一人の女性として意識していることを告白するが、陽子は返事をしない。啓造は朝早くムラヤナ松の林を歩く陽子を見かけ、秘密を持つことの恐ろしさや、自己中心が罪のもとではないかと考える。
37 街角 クリスマスが近い夜、陽子は夏枝に頼まれて買い物に出る。四条の平和通りで北原が女性と二人連れで歩いているのを目撃するが、彼女は北原の妹のみちこだった。自分の誤解と一言へりくだって訪ねることが出来なかったことの非礼を陽子は手紙につづって北原へ送る。
38 ピアノ 陽子からの手紙を受け取った北原は、陽子に返事を出す。そこには「クリスマス・イブの六時に君の家を訪ねます」と書かれていた。手紙を読んで喜ぶ陽子。徹が突然帰省し、陽子にクリスマスプレゼントがあるという。中身が何かをあてっこする二人だったが、そこに北原が到着する。陽子の様子に傷ついた徹は、茅ヶ崎の祖父の元へと去ってしまう。
39 とびら 元日の朝、陽子から翌日北原が来ることを知らされた夏枝は、北原の目の前で、陽子が誰の娘かをばらそうと決める。しかし、天候不順と体調不良もあり、北原の訪問は1月14日まで伸びる。夏枝から事実を知らされた北原は、高木のところに真相を確かめに行くと言うが、陽子は「もういい」という。その日㋨晩、陽子は部屋から出なかった。
40 遺書 陽子は、啓造と夏枝、徹、北原に宛てて三通の遺書を書く。啓造たちの遺書には「自分の中の罪の可能性を見出した私は、生きる望みを失いました」「陽子の氷点は「お前は罪人の子だ」というところにあったのです」「ハッキリと「ゆるす」と言ってくれる権威あるものがほしいのです」と書き記されていた。
41 ねむり

陽子は、見本林でカルモチンを飲んで自殺を図った。一方徹は虫の知らせを感じて旭川に戻るが、陽子の部屋で三通の遺書を発見する。高木の口から、陽子が誰の子であったのかを知らされる。陽子は佐石の娘ではなく、中川光夫と彼の下宿先の人妻・三井恵子の子であった。夏枝に犯人の娘を育てさせることなど出来ないと思った高木の配慮だった。啓造は、陽子の遺書を高木に渡す。そして、陽子が罪の根本について悩んだ末に自殺を図ったのだと気づく。

*1:ジュニア文芸. 3(1) - 国立国会図書館デジタルコレクション circled.2018/8/3http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1761024?tocOpened=1

*2:ジュニア文芸. 3(2) - 国立国会図書館デジタルコレクション(circled.2018/8/3http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1761025?tocOpened=1

*3:ジュニア文芸. 3(3) - 国立国会図書館デジタルコレクション(circled.2018/8/3http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1761026?tocOpened=1

*4:ジュニア文芸. 3(4) - 国立国会図書館デジタルコレクション(circled.2018/8/3http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1761027?tocOpened=1

*5:ジュニア文芸. 3(5) - 国立国会図書館デジタルコレクション(circled.2018/8/3http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1761028?tocOpened=1

*6:初出本を確かめたが第8話が見当たらず

*7:(「自作を語る ベストセラーからの出発・氷点」(1)聞き手・小林篤子ディレクター(1986(昭和61)年7月27日放送より、小説誕生の背景や経緯を語ったもの)

*8:「自作を語る ベストセラーからの出発・氷点」(2)聞き手・小林篤子ディレクター(1986(昭和61)年7月27日放送より、入選時の喜び、「氷点」のテーマ「原罪」について、夫・光世との執筆時の奮闘ぶりなどを語ったもの。