【執筆経緯】
1971(昭和46)年、主婦の友社を訪れた際、社長の石川数男から「ぜひ細川ガラシャの伝記を書いてほしい。いわばガラシャの『道ありき』」を書いてください」と言われる。(三浦光世『三浦綾子創作秘話』参照)
翌年、1972(昭和47)年の夏には『細川ガラシャ夫人』を書き始めていた(三浦光世『創作秘話』参照)。11月、取材旅行。かねてより、主婦の友社から『細川ガラシャ夫人』の取材を求められつづけていたが、歴史物を書いたことがないのと、体の不調のため、綾子は気が進まず返事を延ばしていた。だが、社長の石川数男たっての希望で「取材は後まわしでいい。とりあえず一月号から書き始めて欲しい」と取材旅行が提案され、実施。(『命あるかぎり』第十章4 参照)
【初出】
「主婦の友」(1973年1月~1975年5月、主婦の友社)に連載。
挿絵:中村貞以
時代考証:樋口清之
【単行本】
『細川ガラシャ夫人』
1975(昭和50)年8月1日、主婦の友社
B6判、厚紙装、カバー、オビ
383p ; 19cm
参考文献: p.379 細川ガラシャ夫人略年表: p.380-383
980円
装丁:堀文子
収録:
細川ガラシャ夫人
終わりに
参考文献
細川ガラシャ夫人略年表(オビ)
戦国の世を熾烈に生きた女性。その生涯に投影される著者の愛と信仰の世界。代表作の呼び声も高い名作!
(オビ裏)
感動的な三浦さんの「ガラシャ」
評論家佐古純一郎
読んでいくうちに、描かれるガラシャ夫人と書く三浦綾子さんとが、いつしか私の心のなかで、ぴったりと重なり合うのを感じたが、それは三浦さんとガラシャが時を超えて、人格と人格との、信仰におけるひびきあいを経験していることを意味しているのであろう。
ガラシャの目を通して観た世界
国学院大学教授文学博士樋口清之
三浦さんの作品は、ガラシャ(玉子)を軸にしてガラシャの心の動きを巧妙に描き出したものとして注目に値する。点景にとりあげられている事象も、背景になっている社会情勢も、すべてはガラシャの眼を通して組み立てられている。(オビ背)
著者初の歴史小説
(カバー折り返し)
この物語のヒロイン、ガラシャ夫人の生涯は、他の戦国女性同様、いやそれ以上に悲劇的である。しかし、彼女は信仰という強い心のささえによって、おのれの自我を強烈に印象づけた。
同じキリスト者、女性として三浦綾子先生は、初めての歴史小説に彼女を選び、ご自身の信仰への情熱をそっくりガラシャ夫人に傾けたのである。この長編のユニークな魅力は、つまり心を描く三浦文学の魅力であり、小説「細川ガラシャ夫人」は先生の信仰の象徴でもあろう。
ガラシャの連載を終えられた先生は、休む間もなく次の意欲作に向かっておられる。読者の期待もまた尽きることがない。
『細川ガラシャ夫人(新装版)』1990(平成2)年1月31日、主婦の友社
B6判、厚紙装、カバー、オビ
384頁
1359円
装幀:井上菜津子+①
※「新装版へのあとがき(一九九〇年一月)」が追加された。
(オビ)
殺戮と権謀に明け暮れた戦国時代に生まれながら、美と才をもって男の論理に抗した女性――細川ガラシャ。
神への愛に自らをゆだねた凄烈なその生涯を祈りとともに描いた著者初の歴史小説!
新装愛蔵版
(オビ裏)
今の時代のように、女性にも選挙権が与えられ、権利もほとんど男性と同じように認められる時代になっても、少し油断をすると、人間らしさは崩れていく。
まして、四百年前、女性は男性の所有物であり、政略の具であった時代に、女性が人間らしく生きるということは、極めてむずかしいことであったと、想像される。そうした時代に、霊性にめざめ、信仰に生きたガラシャの生き方は、わたしの心を深く打つ。
この小説を書きながら、わたしは自分が人間として生きることの大変さを改めて考えさせられたことであった。
(「終わりに」より抜粋)
【作品集】
『三浦綾子作品集 第十二巻』1983年9月25日、朝日新聞社

三浦綾子作品集〈12〉細川ガラシャ夫人.千利休とその妻たち (1983年)
- 作者: 三浦 綾子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1983/09
- メディア: -
【文庫】
『細川ガラシャ夫人』(上)(下)1986年3月25日、新潮文庫、新潮文庫
上:293p;15cm
400円
収録:細川ガラシャ夫人
下:327p;15cm
440円 (税込)
収録:細川ガラシャ夫人/参考文献/解説(水谷昭夫)/細川ガラシャ夫人略年表
341p;16cm
590円
『細川ガラシャ夫人 下 改版』2012年7月20日、新潮文庫、新潮社
383p;16cm
630円
細川ガラシャ夫人略年表:p380~383
【全集】
『三浦綾子全集 第六巻』1992年3月3日、主婦の友社
【小説選集】
『細川ガラシャ夫人(三浦綾子小説選集7)』2001年6月1日、主婦の友社
【電子全集】
『三浦綾子 電子全集 細川ガラシャ夫人』(上)(下)2012年12月28日、小学館ebooks
付録あり。『細川ガラシャ夫人』を書き終えて 初出「信徒の友」10月号、日本基督教団出版局、1975年10月1日 ※『私にとって書くということ』にも収録。
【英訳】
Lady Gracia : A Samurai wife's love, strife and faith
AyakoMiura著
SusanTsumura訳
出版社 アイビーシーパブリッシング
発売社 日本洋書販売
448p ; 19cm
2004年7月