integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

積木の箱

【初出】
朝日新聞夕刊:1967(昭和42)年4月24日~1968(昭和43)年5月18日

【単行本】
1968(昭和43)年5月25日、朝日新聞社
B6判、厚紙装、カバー、オビ
394p ; 19cm
さしえ/装幀 小磯良平

(オビ)
ベストセラー「氷点」の三浦綾子が、再び朝日全日本読者の心をつかんだ長編第2弾! 北海道の四季を背景に「学校教育」という地震のある題材と組んで人間の愛と悩みを描く 朝日新聞連載中に静かな感動をよんだ名作NET放送決定

積木の箱 (1968年)

積木の箱 (1968年)

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1968
  • メディア: -

【文庫本】
『積木の箱』上下、1978年7月20日、朝日文庫、朝日新聞社
上:
305p;15cm
300円
収録:積木の箱

下:
303p;15cm
300円
収録:積木の箱/解説(高野斗志美)

積木の箱 上 (朝日文庫 み 1-5)

積木の箱 上 (朝日文庫 み 1-5)

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 1978/07
  • メディア: 文庫

積木の箱 下 (朝日文庫 み 1-6)

積木の箱 下 (朝日文庫 み 1-6)

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 1978/07
  • メディア: 文庫

『積木の箱』上下、1984(昭和59)年10月25日、新潮文庫、新潮社
上:
333p;15cm
320円(税込)
収録/積木の箱
下:
334p;15cm
320円(税込)
収録/積木の箱/解説(昭和59年9月 水谷昭夫)

積木の箱 (上巻) (新潮文庫)

積木の箱 (上巻) (新潮文庫)

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1984/10
  • メディア: 文庫

積木の箱 (下巻) (新潮文庫)

積木の箱 (下巻) (新潮文庫)

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1984/10
  • メディア: 文庫

『氷点』50年記念新装版『積木の箱』(上)(下)発売開始。 
2014年(平成26)年10月29日、新潮文庫、新潮社
上:
637円(定価)
収録/積木の箱

下:
680円(定価)
収録/積木の箱/解説

※現物未確認のためページ数等一部不明。

【抄録】
北上次郎編『14歳の本棚 : 青春小説傑作選 家族兄弟編』(新潮文庫)
2007(平成19)年5月、新潮文庫、新潮社
381p ; 16cm
552円 ) ※『積木の箱』(抄)が収録される。

青春小説傑作選 14歳の本棚―家族兄弟編 (新潮文庫)

青春小説傑作選 14歳の本棚―家族兄弟編 (新潮文庫)

  • 作者: 野中 ともそ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 文庫
※現物未確認のため詳細不明。


【作品集】
『三浦綾子作品集 第四巻』1984年5月25日、朝日新聞社

三浦綾子作品集 4 積木の箱

三浦綾子作品集 4 積木の箱

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 1984/01
  • メディア: 単行本

【全集】
『三浦綾子全集』第二巻 1991年8月7日、主婦の友社

三浦綾子全集 (第2巻)

三浦綾子全集 (第2巻)

  • 作者: 三浦 綾子
  • 出版社/メーカー: 主婦の友社
  • 発売日: 1991/07
  • メディア: 単行本

【電子全集】
2012(平成24)年11月9日、「三浦綾子 電子全集」(小学館ebooks)
『積木の箱(上)』、『積木の箱(下)』

三浦綾子 電子全集 積木の箱(上)

三浦綾子 電子全集 積木の箱(上)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1984/10/25
  • メディア: Kindle版

三浦綾子 電子全集 積木の箱(下)

三浦綾子 電子全集 積木の箱(下)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1984/10/25
  • メディア: Kindle版

【映画化】
1968(昭和43)年9月、大映映画

【DVD】
2014年6月27日(金)発売開始
DVD「積木の箱」
原作:三浦綾子『積木の箱』
監督・脚本:増村保造
脚本:池田一朗
発売元:株式会社KADOKAWA 角川書店
販売元:株式会社KADOKAWA 角川書店
本編時間:83分、
特典:劇場予告編、フォトギャラリー
出演:若尾文子(川上久代)、緒方拳(杉浦悠二)、佐々林奈美恵(松尾嘉代)、佐々林みどり(梓英子)、津島百合(南美川洋子)、佐々林一郎(内田喜郎)、川上和夫(島田洋)、佐々林トキ(荒木道子)、佐々林豪一(内田朝雄)
※1968年9月の大映映画のDVD化

積木の箱 [DVD]

積木の箱 [DVD]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: DVD

【綾子から光世への献辞】

(単行本)
すべては光世さんのお祷りと協力のおかげです。
一冊目がどこかへ行って、これで二冊目。
一九七六・七・五 受洗記念日      綾子
光世様


(新潮文庫版 上巻)
自著を愛する夫に捧げることができるなどというのは、
何と幸せなことでしょう。           1984・10・25 綾子  光世様

(新潮文庫版 下巻)
                          1984・10・25 綾子  光世様

1坂道杉浦悠二は、私立北栄中学の赴任初日、坂道で知り合った川上和夫を自宅である「川上商店」に送ったことで、初日早々遅刻をしてしまう。
2正門悠二は3年A組を受け持つことになり、ホームルームの際、自己紹介を兼ねて将来の夢を聞く。自分の受け持ちの生徒の中に、朝あった少年(佐々林一郎)がいることを知り、声をかける。
3一郎は、担任の悠二が不快でならない。自分の心の奥まで知られているような感じがしてならないからだ。一郎は、父の豪一のことを誇りに思っていたが、1カ月ほど前、父と奈美恵の関係を偶然知ってしまい、以来妻妾同居状態になっている我が家が呪わしくてならない。そんな一郎の姿を、同じクラスの津島百合は「憂鬱病」と評し、「ぜいたくよ」と批判する。
4大垣夫人悠二は、大垣吉樹の母の訪問を受ける。大垣夫人は、ホームルームの出来事や、津島百合の態度を非難し、悠二の言葉を歪曲して捉える。
5夕風結婚や新婚旅行のことをマユミから聞いた和夫は、久代の花嫁姿を見たいというが、久代ははぐらかす。敬子と悠二は大垣夫人のことや一郎のことを話題にする。敬子は、和夫に対する久代の態度から、今まで未亡人だと思っていた久代が、結婚をしていないか、相手の親の反対で恋人と引き離されてしまったのかもしれないと考えて、久代が夫のことばかりではなく、自身のことについてもほとんど話したことがないことに気づく。
6暗い部屋一郎とみどり佐々林家について語り合うが、奈美恵の話題になった途端に、一郎の部屋に奈美恵がやってくる。一郎は、憎みつつも奈美恵のことが憎み切れず、心の中では幾度か犯したことがある奈美恵をまぶしく思う。
7くもり日6月4日、北海道護国神社宵宮祭である。店を訪れた客から「天国」という言葉を聞いた和夫は、母に尋ねるが、久代は悠二に聞くように言い、和夫は悠二に質問するが、悠二も曖昧なことしか教えられない。悠二は一郎の家を訪問しようとしたところ、常磐公園では一郎と奈美恵が話しているのを目撃する。一郎の様子を母親のトキに聞こうとするが、楽観的なトキの態度に杞憂ではないかという気さえしてくる。また、一郎の姉・みどりから数学の家庭教師をしてほしいと申しこまれる。悠二の帰宅後、トキは一郎を注意する。
8綿アメ悠二は慰霊音楽行進を見に、緑橋通りに出かける。そこで、和夫を連れた寺西敬子と会い、一郎のことを語り合う。また、同僚の戸沢千代とも話すが、自身が平和の問題について積極的になれないことについて平和に対して絶望的であることと、自身が卑怯であることに原因があるとする。悠二はかつて公立中学に勤めていたが、組合運動に積極的だったことから辞めざるを得なかったのだ。以来悠二は「教師は教壇の上に立って、生徒を教えていればいいのだ」と考えるようになった。
9視線授業参観後、保護者懇談があった。懇談の席で、大垣夫人は悠二が敬子と歩いていたことなどを非難する。津島百合の母が助け船を出すが、大垣夫人は追及の手を緩めない。そのとき、佐々林トキが現われたことから、場の雰囲気は一転し、明るくなる。トキは、娘のみどりが悠二に家庭教師をして欲しいと言った話を忘れてほしいと言う。
10木漏れ陽トキは、川上商店を訪れる。途中立寄った鷹栖神社で12年前のことを思い出し、奈美恵の正体を知ったのかを回想し、一郎がふさぎこんでいる原因を考える。懇談会の後、学年会を終えた悠二は川上商店を訪れ、久代からトキから預かったというハイライトを20箱受け取らざるを得なかった。
11丘の夜久代は、敬子が言った「おそれわれてみたいのよ」ということばを機に、8年前豪一に父が部下の犯した不正のため七十万円の埋め合わせをするために金策に走っていることを相談したところ、料亭花むらで豪一から犯され、その日の晩に父が縊死し、ほどなく母が死んだこと、ほどなく和夫を妊娠し、帯広で出産したことを思い出す。和夫は、久代に話をしてもらうが、その話(神さまから和夫ちゃんが右手で触るとどんな人でも優しい心になる能力を授かった)聞いた和夫は、自分の右手にもその力があると信じるようになる。
12アリの巣一郎は、母から注意されたものの、川上久代の店で朝食を買うのを改めなかった。いつものようにパンを買い、神社で食べていると和夫が牛乳を持ってきてくれる。和夫は一郎に右手で触れると、久代が話してくれた通り一郎が笑ったと喜ぶ。二人は一緒にアリの巣を見る。朝、牛乳代を払い忘れた一郎は、久代の店に寄って代金を支払う。その晩、一郎は久しぶりに勉強に励んだ。
13羽虫悠二の宿直時に、みどりが訪れ、佐々林家の秘密を打ち明ける。
14犬の声一郎は、この一週間ほどは再び勉強が面白くなっていたが、お手伝いの涼子が犬とふざけるのを見つめるうちに、自分と同じように涼子を見ている父の姿に気づき、自己嫌悪にかられる。そこへ、みどりがやってくる。一郎は、奈美恵のことをみどりに話すが、みどりはとっくの昔に奈美恵が豪一の妾であることを知っていたことに驚く。一郎は父親を困らせるようなことをしようと考える。
15ドライヤー久代は、たまたま訪れた美容室で、奈美恵と隣り合わせになり、何者なのか疑問に思う。
16草の上七月、放課後悠二のクラスの生徒たちは、平和問題について語り合った。しかし、悠二はそれをただ聞いているだけで、山田健一の発言を幸いに、体よく生徒たちを帰してしまう。悠二はそんな自分に自己嫌悪を感じる。
17入道雲和夫は天国へがどこにあるか知っているというマユミと一緒に歩いて鷹栖村まで行く。マユミが、天国は川の向うにあると言ったので、川を渡ろうとして溺れてしまう。溺れた和夫を助けたのは一郎だった。久代は、一郎に和夫と仲よくしてほしいと頼む。敬子が帰宅し、洗濯物を取り込もうとしたところ、下着が盗まれていた。
18乱反射1学期が終わった。敬子は、学校行事のサマーキャンプに久代親子を誘う。
19地獄谷夏休みが入って3日が過ぎた。豪一の会社の慰安海水浴に、みながでかけたが、一郎は毎年奈美恵が一人残るのを計算し、奈美恵を犯そうとしたが実行できなかった。奈美恵は「一郎さん、あたしね、生れた時に、もう父親がなかったのよ。母はあたしを登別温泉の地獄谷のそばに捨てて、どこかに行ってしまったの」といい、自身が佐々林家に暗い影を落としていることを認める。
20風鈴和夫がと動物園に行っている間に一郎が久代の店を訪問する。一郎は奈美恵のことを久代に打ち明ける。久代は、一郎も一緒にサマーキャンプに行かないかと提案する。一郎は、久代が自分のことになると口をつぐむのを不満に思う。その晩、久代と和夫は天国に行くことの困難さや神様へのお祈りの仕方について語り合う。
21砂湯悠二たちはサマーキャンプで屈斜路湖の砂湯に出かける。第一夜のキャンプファイヤーで、悠二は日頃の教室とは異なる生徒たちの様子を見て「どうして教室ではこんな顔がみられないのだろう」と思う。その晩、敬子は自身の気持を悠二に告白するが、久代がその会話を偶然聞いてしまう。翌日、悠二たちに豪一が奈美恵とみどりをつれて、チョコレートなどを差し入れる。和夫は物おじせずに豪一に話しかけ、天国の話や久代の店で買い物してほしいことを言う。悠二は、豪一が久代の店を訪れるのではないかと不安になる。一郎は父の姿に憎しみを覚える。
22断面図キャンプから帰って憂鬱な一郎のもとに、津島百合から電話があるが、一郎は電話を切ってしまう。夫婦雑誌を持ち出そうとした一郎は現場を店員に抑えられたところを悠二に目撃される。父を困らせるために盗んだと言う一郎の言葉を信じず、本を読みたかったから持ちだそうとしたとする悠二に対して「理くつぬきに、悠二が憎かった。悠二は、父のことなど、何の同情も示してくれない。久代なら、もっと親身になって聞いてくれるだろう」とした上で、悠二が夫婦雑誌を書店に返しに行くことで「言い知れぬ敗北感」と「なぐられたより底知れぬ憎しみ」を感じる。
23鉄柵和夫は、天国に行く道が少しわかったのと久代に言う。久代が問屋の店員と話している間に和夫はバスにのって、一郎の家に向う。家まで来たが、草書が読めない和夫はそこが一郎の家だとは分からず、涼子に冷たくあしらわれ、常磐公園でうとうと眠る。涼子からこのことを聞いた一郎は、久代の店を訪れるが、悠二と久代の手が偶然触れたところを目撃し、不快感を覚える。一郎は久代に和夫が本当の弟のような気がすると語り、どんなことがあっても、和夫だけはかわいがっていけるような気がした。
24ロッカー日直の敬子が出勤すると、職員室前の廊下で、生徒たちが騒いでいる。悠二のロッカーに下着が入っていたが、戸沢千代が機転を利かせて事なきを得た。同日、校長室に呼びび出された悠二は、大垣夫人からサマーキャンプで大垣がルールを破って持ってきた金を預かったことや、久代が参加したことについてのクレームを受け、息子を公立中学に転校させると騒ぎ立てるが、こちらも校長が夫人の相手を引きうけ、事なきを得る。
25映像みどりが川田カメラから受け取った一郎の写真の中に、久代の姿があった。豪一も奈美恵も、久代が鷹栖神社前で店を経営していることを心に留める。和夫は、マユミの父に幻灯会でかぐや姫の話をしてもらい、父親が欲しいことや、悠二に父親になって欲しいと久代に言うが、久代はそんな和夫を注意する。
26挑戦久代の店を訪れた奈美恵は、五十円のチョコレートを二ダース買い求めるが、久代はチョコレートを包みながら、「いち早く奈美恵の敵意を感じ取っていた」。奈美恵は久代に執拗に質問をし、自身が豪一の愛人だと明かした後和夫を認知してもらわないのか、金が欲しくないのか等など興奮して尋ねた挙句、去ってしまう。車が坂を下りる頃になって、買い物の品を置き忘れ、代金を支払わなかったことも思い出す。さらに「奈美恵は自分がもっと重大な忘れ物をしたような気がして、更にあらたな不安に襲われた」。
27小路悠二は公立中学校に勤めていた頃、三年間連続中学三年を受け持ち、三年間合格率が百パーセントだったことを今でも心地よく思い出すが、教え子・鍵谷キリ子がデパートをやめ、バーで働いているのを見て、「いいようのない虚無感」が湧いてくると共に、自分が数学を教える意味をもう一度考え直さなければならないと思い、生きるという問題に時間を割かなかったことに気づく。帰宅後、大川松夫の訪問を受けた悠二は、大川が父親が経営している鉄工所が倒産したため公立高校に転校しなければならないことを聞き、大川を慰めるために男山自然公園に連れていく。
28ソファ豪一の留守中、奈美恵は一郎を抱き寄せたり、耳をかんだりして、一郎の反応を愉しむ。奈美恵は、豪一との関係を指摘する一郎に対して、一郎のことが好きだと言い、奈美恵が剛一の部屋に入らないように見張るように頼む。また、久代のことや悠二のことを一郎に尋ね、和夫と仲よくすると後悔すると忠告する。豪一が帰宅した後、一郎は二人を見張り、奈美恵が豪一の部屋に入らなかったことに安心する。
29発車二学期が終わりの日、悠二は生徒たちを玄関に見送ったが、大垣の様子に、転校したのが大川ではなく大垣だったらと思い、自分が嫌になる。玉脇のクラスの尾坂は、からことづけられた靴下を玉脇に渡した所、玉脇の些細な一言に深く傷つき、玉脇の膝をけり上げるという事件を起こす。この事件にショックを受けた悠二は冬休み中に家庭訪問をする。元日、久代の家を訪れた一郎は、奈美恵のことを久代に話す。和夫は天国に行けるようにお祈りをすることを思いつく。
30動く壁一郎は、津島百合から告白されるが、「百合のような清純な想いに応える資格はない」と思う。奈美恵の部屋に立寄った一郎は、奈美恵の部屋と豪一の部屋がつながっていることを知る。奈美恵は、一郎とみどりに久代と和夫のことを話し、これを聞いた一郎はただちに川上商店を訪れる。久代は一郎と敬子に自身の過去を話し、和夫を生んだ理由を「わたしには、罪のない命を、そんなむごいこと、できなかったわ」と語る。
31一郎は、悠二が当直の日に放火を実行する。その理由として「悠二が何となく嫌いだった」ことや、悠二が久代や和夫と親しいことに「いっそう不愉快だった」こと、和夫が悠二に父親になってほしいと願っていることについては「あんな悠二等が父親になられてはかなわない」と思い、悠二に学校を去ってほしいと考えたからである。だが、帽子を落としたため、自分が放火をしたという証拠を悠二に掴まれる。悠二は、一郎をかばって、警察には自らの失火だと言い張る。緊急理事会が開かれ、悠二はよその中学校への左遷が決まる。
32こだま悠二は一郎を「こだま」と呼ばれる部屋に呼び出すが、一郎は沈黙を守ったままである。三月二日、一郎が落とした帽子を見せるが一郎は否認する。悠二は、そんな一郎の様子に自らを「甘い教師」と自嘲し、「深い絶望」を感じる。
33黒いドアトキは豪一に、一郎とみどりがかくしドアの存在を知ったことと、久代と和夫のことを告げる。その時、みどりが部屋にやって来て、夏休みに九州旅行に行った際に福岡で男に襲われ子供ができたと告げる。豪一とトキはただちに手術を受けるように言うが、みどりは産むと抵抗し、一郎が学校を放火し、悠二は一郎が犯人だと知っているにもかかわらず、一郎をかばって左遷されるのだと告げる。みどりはその晩家を出る。
34終章悠二は学校を去ることになった。在校生の前で別れの挨拶をした悠二だったが、一度も教えたことのない生徒たちに別れを告げることにむなしさを感じる。職員たちに見送られて玄関を出た悠二は、卒業した三年A組全員が迎えてくれたことで深く慰められ、たあいもない喜びを感じる。一郎はみどりからの手紙を読む。みどりが妊娠七カ月だと偽って家を出たことや、放火の件を正直に打ち明け、悠二に謝罪するようにと書かれていた。和夫と会った一郎は、和夫を抱きしめ、自らが日をつけたことを叫びながら坂道を走った。