『続氷点』:
牛乳屋さんの小父さんと小母さんの会話で陽子は自分がもらい子だと知り、涙があふれそうになり、いつもの「汗と涙は人のために流しなさい」という言葉を思い出したが涙があふれた。(大吹雪)
『太陽はいつも雲の上に』:涙と汗は人のために流せ
空の章に「わたしが、旭川大成小学校の何年生の頃であったろう。高等科のクラスに、この言葉がいつも掲示されてあった。わたしはその教室の前を通る度、この言葉に共感を憶えた。そして後に「氷点」を書いた時、この言葉をつかった。」という綾子の解説がある。
『忘れてならぬこと』:涙と汗は人のために流せ
「問題は何か」(初出:日本基督教団出版局「信徒の友」1972年6月号)の中に次のような文章がある。
わたしが学んだ頃の小学校には、校訓、級訓、週訓などがあった。そして、大ていの教室には、級訓や週訓が掲げてあった。
「明るく素直に」「勤勉」「正しい姿勢」などという級訓の多い中に、非常に印象に残った級訓があった。それは、
「涙と汗は人のために流せ」
という言葉であった。その教室の前を通るたびに、窓ごしにその言葉を見、わたしは心うたれたものである。他の級訓より、数等光った言葉に、わたしには思われた。
ということもあって、わたしは自分の心に残った言葉を、意識的に小説の中に引用する。この級訓は、「氷点」の中でつかった。