三浦綾子は小説家になる前、雑貨屋を営んでいた。
商品の棚卸しをする時の様子は『道ありき』に詳しく記述されているが、『積木の箱』にも自身の経験をもとに以下のように記述されている。
『積木の箱』:
久代は朝の三時まで、老いの功と店の棚卸しをした。十二月三十一日現在の品数を、久代は正確につかまなければならないと懸命だった。めぼしい物は暮のうちに調べておいたが、暮は品物の動きが激しい。損な性分だと思うが、久代は物事をいいかげんにすることができなかった。
アイスクリームや、鉛筆の数まで、久代は丹念に調べ上げて行った。だから、今朝は九時まで寝坊をした。(発車)