integral:三浦綾子資料室

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漱石は『草枕』の中で、世間というのはつまり隣近所に住む一人一人のことだとか、なんとかいっておりましたわね。

『漱石全集 第三巻』(岩波書店、一九九四年二月)によると

「人の世を作つたものは神でもなければ鬼でもない。矢張り向ふ三軒両隣にちら/\する唯の人である」 (一)とある。
※「人の世」には原文には傍点あり。

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『積木の箱』:
「つまりね、わたしは夏目漱石が『草枕』で言った言葉をいつも思うのよ」と言い、戸沢千代は敬子に次のように言う。「そうよ。漱石は『草枕』の中で、世間というのはつまり隣近所に住む一人一人のことだとか、なんとかいっておりましたわね。とにかく、問題はその一人一人なのよ。わたしも、あなたも、杉浦先生も、一人一人がハッキリ戦争をいけないんだって、言えばいいと思うの。その仲間がだんだんふえて、政治家の奥さんも、実業家の奥さんも、御主人に、わたしせんそうはいやでございます、というのよ。みんながいやだいやだといえばいいと思うの。ほんとは誰だって、戦争はいやにきまっているんですけれど自分一人が何を言っても仕方がないなどと投げ出すから、戦争を起そうと思う者には、都合のいいことになってしまうのよ」(綿アメ)