integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

積木の箱:一郎/佐々林一郎

父は佐々林豪一。母はトキ。姉はみどり。 

悠二が赴任初日、立ち寄った店で出会う。無言でパンと牛乳を買っていく。 赤いほこらの前に腰をおろしてパンを食べていたところを悠二が声をかけ、襟元に「北栄中学三年」のマークがついていることから、親しみをこめて声をかけるが悠二を無視する。

私立北栄中学三年A組に在籍。津島百合の隣にすわっている。父と姉だと思っていた奈美恵との関係を知り、思い悩む。この姿を津島百合から「たしか、ひと月になるわね。あなたが憂鬱病にとりつかれたのは。いったいどうしたっていうの。反抗期なの?」と指摘される。教師の寺西敬子も気にしつつ「わたしは、大した心配はしてないわ。よくある反抗期だと思うのよ」と言い、家庭環境については「いわゆるお金持のうちということだけで、大した変ったこともないんじゃなかしら」と言う。国語教師の掛居は「思春期のハシカ」と言い、特に心配はしていない。悠二は家庭訪問をするが、その際母親のトキに「勉強に身が入らないのは、多分テレビの見過ぎだと思うんでございますよ。それに、反抗期という厄介な年ごろでございましてね」と「何の苦労もないような笑顔」を見せられ、「単なる杞憂のようにさえ思われてくる」。悠二は悩みの実態を知りたいと思いつつ、家庭の恥部に踏み込むこともあるので、どこまで生徒の悩みを聞いてやれるのかと悩む。

「小学校からずっと優秀だった」

「父の豪一と、いつもガラスを一枚隔てて対しているような間柄」「小学校五、六年以来、父親が自分の体に手をふれてくれたことなど一度もないような気がする」

夫婦雑誌を持ち出そうとした一郎は現場を店員に抑えられたところを悠二に目撃される。父を困らせるために盗んだと言う一郎の言葉を信じず、本を読みたかったから持ちだそうとしたとする悠二に対して「理くつぬきに、悠二が憎かった。悠二は、父のことなど、何の同情も示してくれない。久代なら、もっと親身になって聞いてくれるだろう」とした上で、悠二が夫婦雑誌を書店に返しに行くことで「言い知れぬ敗北感」と「なぐられたより底知れぬ憎しみ」を感じる。また、たまたま久代と悠二の手が触れたところを目撃し、「久代を奪われたような淋しさと、憎しみ」を忘れることができず、二学期初日、悠二のロッカーに下着を入れる。悠二は一郎が犯人であることを見破り、『坊っちゃん』や自身の過去を引き合いに誤りづらいことを話すが、一郎は「更に深い憎しみ」を抱き、悠二を「狡猾なおとな」だと思う。

一郎は、奈美恵から久代のことを言われた際、久代と悠二が親しいことに「嫉妬」を感じる。悠二が久代たちと親しいことや、和夫が悠二に父親になってほしいと願っていることが「不愉快」。

二月に、津島百合から告白されるが、奈美恵とのことを思うと「百合のような清純な想いに応える資格はない」と思う。

久代から豪一のことを知らされた一郎は、最初自殺や父を殺すことを考えるが、考えあぐねた結果、学校を放火して父の行状が明らかになればいいと思い、放火の計画を立てるうちに三月二日が悠二の当直であることを知り、この日に実行する。

ハムが好き。

(1)「暗い感じの少年」「つまらなさそうにパンをかじっていた少年」「暗い表情」「暗いまなざし」と描写される。幼い和夫の目からも「どうしていつもそんなつまんない顔しているの」と気になり、「いつみてもふさいでいる一郎のことが、子供心にも気になっていたのだ」。

「動く壁」の章では、みどりに「一郎君も生意気にポツポツひげがはえてきたからさ。あっ、あごにまではえてるわ」「あごにニキビも出てるじゃないの」と指摘される。

(2)敬子によると「走るのが早くて、割に感じのいい子だった」「わりかし素直」だという。

みどりは、「羽虫」の章で一郎について次のように評する。「だめだめ。先生は簡単に希望を持つけれど、あたしのみた一郎は、あれはもうだめよ。父が不潔だからって、一郎のように自分まで不潔になるなんて馬鹿よ。甘ったれてるわ。そして、おれが悪くなったのは、おやじが悪いんだって、あの子は人のせいにするのよ。きっと」

豪一に火事のことを知られても「知らぬ存ぜぬで頑張り通した」。豪一から「案外しぶとい奴」と言われる。

(3)「ぼくが今一番欲しいのは、おかあさん、みんなで楽しくごはんを食べることなんだ」