高木に話が来た見合い相手の長男。十五の男の子。
郁子に決めた理由について、高木は、現役で働けるのが十五年と想定したうえで次のように語っている。
「三十七の人をもらうと、つれて来た子供は、三十と二十八になっている。俺の子が生れても、その兄貴たちが、少しは面倒も見るだろうよ。まず安心して死ねるというわけだ」「いま十五と十三の子供をかかえてでは、もらい手もない」「俺もしょうばいがら、殺生してきているからな。この辺で、せめて罪ほろぼしに人の子でも育てるさ」といい、冬休みのうちに結婚相手の子供を新婚旅行に連れて行きたいと、1月11日に式を挙げる。新婚旅行先から啓造に送った葉書には「おい辻口、おれはもうけたぜ。フラウのほかに、産みも育てもしないで、こんなかわいい男の子を、一ぺんに二人ももらったんだからな。子供二人をつれた、にぎやかな新婚旅行も乙なもんだ」と語る。
啓造が高木の家を訪れた際、「あの兄貴が公一だ。二人の名前を頭に並べてみろ。公共だよ」と名前だけ出てくる。