integral:三浦綾子資料室

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続氷点:達哉/三井達哉

三井弥吉と恵子の次男。潔の弟。陽子の異父弟。「燃える流氷」の章で、陽子は北原の事故について「わたしの弟があんなことをしてしまって……」と言い「欠点だらけの達哉だが、まさしく陽子のはじめて知った肉親であった」と語られる。

小樽市色内町二丁目に住む。
徹が入院した恵子を訪れたときにいた。

北海道大学教養学部(理類)に入学、陽子のことは道庁そばの交差点で会って以来、ずっと探していた。時折教養部の廊下で会うことを陽子に語る。徹は、「厄介な人間」と評し、夏枝も達哉の存在については「何だか気味が悪くてならないんですの」と打ち明けているが、陽子にとっては「理屈ぬきに達哉がかわいい」が、「複雑な思い」もある。陽子への関心の高さは、休日に小樽から陽子の下宿に訪ねてきたことや陽子と同じ黒百合会に入会したことからうかがえる。

陽子に納豆が好物で「納豆はうまい食物ですよ。長ねぎや、からいをまぜて、しょうゆをかけて、糸のふわふわに引いた納豆を、熱いごはんの上に乗せて食べるおいしさは、ぼくは最高だと思うんだがなあ」と言っている。

(1)「交差点」の章で、陽子とすれ違う。陽子はその時の印象を「食いつきそうな激しい表情」だったとし、陽子も達哉のことを忘れていなかった。陽子とは、北海道大学の芝生で再会する。陽子は「笑っても、どこかにかげりがある。だが、心にしみいるような優しい笑顔」で「やせ型の、どこか神経質な感じだが、徹ともちがう。もっと激しいものが、眉宇のあたりに漂っていた」と感じる。

(2)「感受性の鋭そうな少年」「根はやさしい」「母思い」「思いつめたらなにをするかわからない、純粋な感じ」。母の三井恵子は「達哉はとても、わたしに優しいの。でもデリケートな子よ。兄の潔とは大分ちがうわ」と言う。自分でも陽子に「ぼくって、激しいんです。母に対しても、兄に対しても。好き嫌いが激しいのかなあ。自分でもこんな自分がいやになるんです」「ぼくって、少しおかしいんですね。すぐかっと頭にくる。これがぼくの欠点なんです」と言う。啓造は、達哉に真相を知られることについて「達哉君は感受性が強いらしいから、ぐれるかもしれないんだよ」と心配する。陽子は徹に「あのひとはかなり執念深いところがあるんですもの」と語る。

(3)「何ていうかな。ほら、切手を収集する人間の心理と似てるかも知れない。おふくろに関するものは、みな集めたいんだ。ちょっとわかりづらいかな」(「新芽」)「いやだ。僕は母が美しいから好きなんだ。もし、そんな……うす汚れた人間だとしたら、決して許しゃしないよ」(追跡)