integral:三浦綾子資料室

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サロベツ原野/利尻礼文国定公園若咲内地域

『続氷点』:
・啓造と高木は二人でサロベツ原野を訪れる。

 間もなく、白い水芭蕉の群生する野に出た。所々黄金色のヤチブキが群れ咲き、うす青いエゾエンゴサクの花が、水を透かして見るように、一面にうるんでいるのも美しかった。水芭蕉は牧草地にまでひろがり、その中に牛が幾頭も、悠々と草を食んでいる。(中略)
 茶褐色の茫漠たる原野の上に、黒く濁った雲が重く垂れこめ、遥か彼方の地平線上に、丘か樹林か、一筋線を引いたように伸びている影が見えた。鳥一つ飛ばず、鳥を宿らす一樹すらなかった。それは、大海原を見るよりも、渺々と、そして荒涼たる眺めだった。海にはうねりがあり、生きていると啓造は思った。だが、この形容し難いサロベツ原野は、いま、重い空の下に、無気味に死んだように横たわっているだけだった。(サロベツ原野)

啓造は、由香子に白い水芭蕉を見せたやりたいと思い、「不毛の地」と高木が評したサロベツ原野同様、自分もまた不毛の地であるように感じる。高木が読んだ掲示板には、「二万五千ヘクタール」(約二万五千町歩)とある。

・豊富温泉を訪れた辰子は、「一度でいいから行ってみたい」と言った由香子の言葉を受けて、サロベツ原野の原生花園に連れて行く。(あじさい)

※『続氷点』:第7章の章名。
啓造は、稚内の妹のところに行くと言う高木に誘われて、同行する。二人は途中、豊富温泉に宿泊したが、啓造は宿で失明してマッサージ師となった松崎由香子を見つける。九人の乙女の碑を訪れた時、啓造は「松崎みどり」の名を見つけ、高木に由香子のことを説明する。