integral:三浦綾子資料室

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続氷点:三井弥吉

恵子の夫。
三井海産物問屋を経営。徹が観察したところ、「分厚い一枚板に、右から横書きされた看板の文字が浮彫りされている。間口六間に、奥行きは十間もあろうか」。「二十坪ほどのうす暗い店の中には事務机が並び、十五、六人の男女の事務員の姿が見えた」。「店と隣家との間に幅三メートル程の路地があった。その突きあたりに、古い格子戸の玄関が見え、「三井」と書いた瀬戸の標札がかかっていた」。
小樽市色内町二丁目に住む。隣りはたばこ屋。

北原の事件から十日後、啓造と夏枝に宛てて手紙を書き送るが、その手紙は「陽子がこの手紙を持っているのが、一番ふさわしいような気がするね」という啓造の判断により、陽子に手渡される。

手紙には、以下のことが書かれていた。
敗戦後一年を経て弥吉は中国から復員したがその心は重く沈んでいた。所属していた小隊が「北支のある部落で、老人や子供や女をひとところに集めて、虐殺することを命じられ」「妊婦の腹をかき裂くという、残忍な罪を犯した人間なのです」と告白し、「明らかに侵略戦争」であったと記述する。「血に汚れてしまった」手で息子を抱くことのできないと感じる弥吉に恵子と恵子の母に弥吉は「何か隠された罪の匂い」を感じ、恵子が妊娠したことを知って恐怖を感じ、「苦痛をまぎらすために、商稼にのみ熱中するようになりました」と続ける。そんなある日、函館に出張に行ったときに、長男の潔が生れる時に世話になった看護婦から女児のことを知らされ、自分が出征中の恵子の動静を調べ、恵子が生んだ子がどこかにもらわれたことを知り、「形容しがたい感謝の思いに満たされた」という。そして、恵子の過失については「妻にうまくだまされてやろう、一切責めずにおいてやろう」としていたが、「本当の問題の解決になっていなかった」ことを思い知ったと記す。

(1)徹は、弥吉について、次のように感じる。「端正な紳士」「美しいグレイの神も豊かに、背筋を真っすぐに伸ばした。背の高い五十も半ばの紳士だった。商人というより、学者のような感じだった。そのあたたかいまなざしが、徹の心を打った」。また、「点滅」の章でも「グレイの頭髪をきれいにわけた一人の紳士」「おだやかな表情」と記される。

(2)記載なし

(3)「甚だ次元の低い、自分に都合のいい考え方でしょうが、妻も他の男の子を産むという罪を犯していたことで、自分の罪が帳消しにならないまでも、幾分は軽くされたような思いになったのは否めませんでした」(燃える流氷)