integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

むなしい/むなしさ

『氷点』:
夏枝のうなじにキスマークを見た啓造は、「不意に何もかもが、無意味に思われた。日頃誇りに思っていた医師としての仕事もむなしいものに思われた。(略)サイの河原に石を積むようなむなしさがあった。患者の命を救っているという誇りを、今夜の啓造は持てなかった。ただ同じことを繰り返しているようなむなしさがあった」と感じる。(雨のあと)

『続氷点』:
・辰子は陽子に「生きているって、むなしいわねえ」と語り、一瞬で消える芸のむなしさについて説明する。また、「陽子君、小母さんはね、いざとなったら、神さまのところに何でも頼みこめると思って、安心していたこともあるのよ。でも、信じもしないで安心しているのは、本物の安心じゃないんだねえ。この頃は妙にむなしくなっちゃってねえ」と言う。(曙光)
・「遂に生みの母に会ったという感動よりも、何かむなしさがあった。心が重く沈んでいくのだ。何の喜びもない母と子の出会いだった。あのひとが私を産み、そして手放した母親なのだ。あの人にとって、わたしは生れなければよかった存在なのだ。妊娠と知った日から出産まで、あの人はわたしの死を願ったかもしれない。あの人から生れた日、あの人はわたしを、少しでもかわいいと思って抱いただろうか。それとも呪いと悲しみをもって眺めたであろうか。陽子はいま見た恵子の、かすかに首を傾け、片手の胸のあたりに軽くおいた優雅なしぐさを思い浮かべた」。(燃える流氷)

『積木の箱』:
・悠二は、別れの言葉を生徒たちに述べるが「一度も教えたことのない生徒の前で、別れを告げるほどむなしいことはなかった」。(終章)