integral:三浦綾子資料室

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氷点・続氷点:佐石の子

 

『続氷点』:「相沢純子」の項目参照。

※『氷点』本文中では、「生まれたばかりの赤ん坊」「生後間もない佐石の子」「佐石の子」「犯人の子」「佐石の子供」「佐石の娘」と表記される。

啓造は、和田刑事の話で高木が関係している乳児院に預けられていることや、「母の死も父の首つりもしらずに、オッパイさえもらえれば、ねむっている」ことを知る。啓造は、かわいそうだという和田刑事の言葉に腹を立てるが、辰子から「もしルリ子ちゃんが、父親もあは親もなくて、一人で生きていくと思ってごらんなさい」と諭され、人間は物事を判断するものさしがいくつもあることを思い知る。

佐石土雄が赤ん坊の泣き声に悩まされたのとは異なり、夏枝に引き取られてからは泣かないことから、啓造は男と女の違いや、夏枝の愛情の深さを感じる。

続氷点:「ルリ子を殺した犯人の娘」「犯人の娘」「犯人の子」「佐石の娘」「殺人犯の子」「佐石の子」「殺人犯の佐石の子」「殺人犯の娘」「自分の子を殺した犯人の娘」「わが子を殺した犯人の娘」と表記される。

啓造は、陽子を引きとった理由を語り、陽子を犯人の娘だと思い込んでいたことをわびる。(窓)
・陽子は、夏枝から「犯人の子」だと罵られたことが、「動かしがたい事実」となっていた。(窓)
・啓造は、犯人の娘ではなく、中川光夫三井恵子の娘だと信じない陽子を無理もないことだと思う。(窓)
・陽子は、「親にされ喜ばれずに生まれた子が、この自分であり、生んですぐ捨てられたのがこの自分なのだ」「佐石夫婦に、喜びをもって迎えられた命のほうがましだった。少なくとも、裏切りの中に生れなかっただけでも、しあわせなような気がする」。(黒い雪)
は中島公園で北原に「佐石の娘は、どこにいると思う?」と語りかけ、北原は、豊平館の丸いバルコンの下にいたふり袖姿の若い女性たちの中にいるかもしれないと言う。(雲ひとつ)
高木は啓造に、「(佐石の娘がいるのは)札幌だよ。おれはハラハラしてるんだ。いつどこで、徹君とかちあうかと思ってなあ」と言う。(サロベツ原野)
・支笏湖で北原は「辻口、今、ひょいと思い出したんだが、例の佐石の娘はどこにいるんだろうね」と徹に質問する。(花しょうぶ)
・順子は、陽子に「佐石さんってご存知?」と尋ね、徹と北原が佐石の娘について話していたことを説明するが、「わたしもよく知らないの。父母の知人らしいわ」と機転を利かせる。(花しょうぶ)
・「順子の手紙を読んで、啓造は、今はじめて佐石の娘が哀れだと思った。生れて来た子には、何の罪もないのだ。頭ではわかっていたが、胸では納得できなかったことが、啓造は今やっとわかる思いだった」。(命日)
・「佐石の娘は、どこでどう暮らしているのかと、陽子はいつも心にかけて来た。それがおもいがけなく目の前にいたのだ。しかも、明るく愛らしく人々に愛されて生きているのだ。この順子の身代わりになって、自分は夏枝に憎まれてきたのかと思うと、陽子はふしぎに心の安らぐのを覚えた。長年の苦しみにも意義があった。決して無駄ではなかったという思いだった。順子が憎まれるよりは、この自分が憎まれてよかったと、陽子は思わずにはいられなかった。」(命日)
・「今度こそ、まさしく佐石の娘が訪ねてくるのだ。啓造は二十年前、乳児院で陽子を迎える時の、あのいい知れない不安と苦悩を思い出した。だが、いま順子を迎える啓造の気持は、あの時とは全くちがっていた。わが子を殺した犯人の娘を迎えるというよりは、不幸な一人の娘を迎えるという気持だった。」(石原)
・「喜々として堤防の上を立っている順子を見ながら、啓造は、ここを佐石に連れられて歩いて行ったルリ子を思った。その路にいま、自分が佐石の娘と共に立っているのだ。」(石原)
・夏枝の口から「……たった三つの子の首をしめるなんて、佐石という男も、ひどいことをしたものですわ」という言葉を聞いた順子は、「わたし、佐石土雄の娘です」と告白をし、謝罪をする。(石原)