integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

氷点・続氷点:辰子/藤尾辰子(ふじおたつこ)

辰子/藤尾辰子(ふじおたつこ)

大正9年~

資産家の一人娘。旭川市六条十丁目の通りから一間ほど入ったがっしりとした木造の二階建てに住む。そばに旭川六条教会がある。夏枝の女学校時代からの友人。日本舞踊「花柳流、藤尾研究所」の師匠。昭和21年、作品冒頭では26歳。喫煙者。獄中死したマルキストの間に男子を産んだが、すぐに死亡。長い間誰にも打ち明けなかったが、啓造にだけ告白する。

(1)「丸顔の親しみやすい顔立ちで、かっきりと彫ったような二重まぶたの目がいきいきとしている」。煙草を吸う手つきや足さばきが美しい。普段は和装なので、セーターを着ると美少年風になる。啓造は「正面より横顔の方が美しい」と感じている。

(2)啓造は「辰子の前にでるとなぜか自分の心にひどく素直になる」。高木は「いい女だが、どうも苦手だな。あの人、人の心の底まで見通すところがあるぜ」と評する。「手きびしい」「滅法性根がありすぎる」と評される。「物欲に執着がない」。

夏枝との対照的な性格は、夏枝の不在中に徹に魚を食べさせる様子からうかがえる。身をほぐしてごはんに乗せてやる夏枝とは異なり、辰子はわざと骨のついたところを徹の口に入れてやり、自分で骨を取らせる。また、辰子の家に行くことに対して注意を受けた陽子は、夏枝と辰子を比較し「辰子は十分に人をくつろがせながら、しかし自分の心の中まで踏み込まれない節度があった。それは決して夏枝がいうようにだらしないという印象は与えなかった」と感じる。

(3)「人間なんて、わたしはそれほどえらいとは思っちゃいない。自分の子でさえ育てかねたり、自分の親でさえ邪魔にする人間どもだもの。人間なんて、わたしはそれほど高く買っちゃいない」(『氷点』)

その他:
『生きるということ』では、辰子について綾子の友人が「まあ、綾さんにそっくりの人が出てきたわね」という感想を漏らしたことが記されている。

「花柳流藤尾研究所」、日本舞踊の師匠。夏枝によると、踊っている辰子は「一芸に秀でた藤尾辰子という別人」。

啓造とは夏枝の友人として知り合い、啓造と高木は、辰子と夏枝を相手にテニスをして遊んだ。卒業後、日本舞踊を習うため東京に出た。その間にマルキストと恋愛し、男子を出産したがすぐに死亡。マルキストは獄死した。その後旭川に帰り、六条十町目で舞踏研究所を開く。辻口家に始終出入りする。「啓造や、徹、陽子にとっても、いつの間にか肉親のような親しい存在になっていた」。

(1)「いつもは元気な辰子の丸顔」

(2)「きびしい、どこか人を踏み込ませない節度を保ちながら、しかしいつも人に頼られている」。黒江によると、独身の理由として、「辰っちゃんのような気性の女」に出会えないからだと言う。由香子は辰子に心を開くようになるが、「辰子には生来、人を頼らせる何かがあった」。

(2)陽子のことで夏枝を非難する徹に辰子は「きびしい」と評し、「徹君、あんた馬鹿よ。もっとおとなにならなきゃ……」と助言するが、徹は「辰子には何をいわれてもふしぎに素直になる」。踊り仲間との会話で、煙草を次の日からやめたというエピソードでは、辻口家の皆を驚かせ、啓造に「意志が強いからねえ、辰子さんは」と評されている。

(3)「だけどね、ダンナ。ゆるすって、人間にできることかしら?」(辰子の家)