昭和18年早春生~昭和21年7月21日没
啓造と夏枝の娘、徹の妹。三才で殺人犯・佐石に殺されて死亡。辻口医院の経営が一番困難なときに生まれた。
※ルリ子の生まれた時期については「昭和十八年の早春に生まれた」(ルリ子の死)と「ルリ子が冬に生まれたためかもしれなかった」(みずうみ)とある。
『「氷点」を旅する』に収録されている「三浦綾子がつづるあらすじ」では、「マリ子」とある。
(1)「ピンクの服に白いエプロン」をかけた姿。「可憐」ではあるが、村井の目には「何かこう神経質な感じや、はれぼったいような眼なんか、院長そっくり」で、啓造と夏枝の子だという事実に耐えられない。啓造はルリ子が小さな手を自分の手に重ねたとき「透きとおるような白いルリ子の手に、ふと不吉なものを感じた」。
(2)「人なつっこいところもある子で、だれにでもよくなついた」
(3)「センセきらい! おかあちゃまもきらい! だれもルリ子と遊んでくれない」
◎続氷点:ルリ子/辻口ルリ子
夏枝と陽子が茅ヶ崎に行った4日目に、啓造は書斎で古いアルバムを開いた。「アルバムの第一頁に、夏枝に抱かれた生後百日のルリ子の写真が貼られてあった。肥ってあごが二重にくびれている」「幼い徹とルリ子が、庭の砂場に足を投げ出し、そのそばに啓造と夏枝がかがんで写っていた。ルリ子の頬に砂がついていて、生えはじめた歯もはっきりと写っている。誰に写されたのか、このときの記憶は啓造にはない」。(たそがれ)
「命日」の章では、「ルリ子の死顔が目に浮かぶ。かすかにあいた口に、みそっ歯がのぞいていたことさえ、いま、目の前にあるように覚えている」と記される。(命日)