integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

 三浦綾子の作品ではしばしば象徴的に用いられる。

(1)日常生活に潜む不穏なものを暗示するもの

処女作『氷点』は「風は全くない。」という冒頭文で始まり、ラストシーンは「ガラス戸ががたがたと鳴った。気がつくと、林に風が鳴っている。また吹雪になるのかも知れない」で終わる。啓造と結婚した当初夏枝は「風にさわぐ林のざわめき」と聞いて「この嵐が、自分の結婚生活を象徴しているような不吉な予感に襲われて、思わず啓造の胸にすがりついた」。

(2)さびしさの象徴

『ひつじが丘』の奈緒実は、良一と輝子、良一の母と輝子の父、京子と約束がありながら奈緒実をお茶に誘った竹山に許しがたさを感じ、結婚はこりごりだとしながらも、いざ竹山と京子が婚約したのを知ると心が揺れ、「体の中を風が吹きぬけていったような淋しさを感じた」。

(3)人間の限りある生、人生のむなしさをあらわす

『帰りこぬ風』では、タイトルそのものに風が使われているが、これは『聖書』(詩篇78:39)の「神は、彼らがただ肉であって、過ぎ去れば、再び帰り来ぬ風であることを、思い出された」より引用。杉井田から裏切られた千賀子は2月21日の日記に「むなしい人生とも知らず、生きてきた自分が愚かしいと思った」と記す。

(4)「九月の風」
『氷点』の章の一つ。第10章の題名。
啓造は、高木に電話をかけ、佐石の娘を引き取りに行く。何も知らない夏枝は、赤子に夢中になり、もらい子だとばれないようにしばらく札幌に滞在すると宣言する。赤子は夏枝により、「陽子」と名付けられた。

(5)「夕風」
『積木の箱』第五章の章名。
結婚や新婚旅行のことをマユミから聞いた和夫は、久代の花嫁姿を見たいというが、久代ははぐらかす。敬子と悠二は大垣夫人のことや一郎のことを話題にする。敬子は、和夫に対する久代の態度から、今まで未亡人だと思っていた久代が、結婚をしていないか、相手の親の反対で恋人と引き離されてしまったのかもしれないと考えて、久代が夫のことばかりではなく、自身のことについてもほとんど話したことがないことに気づく。

(6)小説およびエッセイのタイトルとして使われる
小説『帰りこぬ風』
エッセイ『あさっての風』