integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

カラス(烏)/カラス(烏)の死骸

(1)不吉な予感、嫌な予感をさせるもの

『氷点』では、ルリ子を探す夏枝が見本林の中で発見し、嫌な予感がする。「窪地に入ると夏枝は何かにつまずいた。みると烏の死骸だった。烏の羽がその周辺に散乱していた。いやな予感がした」(『氷点』誘拐)

『続氷点』:陽子が生き返ったことにほっとした啓造は、書斎から見本林を眺める。「見本林の上に、にわかにカラスの声が騒がしくなった。見あげると、雪空の下にカラスの大群がむれていた。空が暗くなるほどの大群だった」(吹雪のあと)

(2)淋しさを感じさせるもの

『氷点』:

陽子は、北原が来たその日、夏枝の命で留守番をすることになる。「陽子は門によりかかって、くれのこる空をみあげていた、烏がさわいでいる。(略)だれもいない家の中で、火の燃える色をながめているのは、いかにも淋しく静かだった」(『氷点』千島から松)

自殺をするためドイツトーヒの林に入ろうと陽子は立ち止まる。「吹きさらされて固い雪の上に、カラスがおびただしく落ちていた。白い雪の上に死んでいる黒いカラスは美しくさえあった。陽子はいきをつめて、カラスをみた。あたりに生きたカラスが一羽もいないのが、ひどく淋しかった。雪に埋まって死んでいるカラスも、いるらしい。雪の下のカラスを思うと、/「淋しい」/と思わず陽子はつぶやいた。/自分の死と、これらのカラスの死と、一体どのようなちがいがあるであろうかと陽子は思った。人間の死も鳥の死も、全く同じであると考えることは淋しかった」(『氷点』ねむり)。

「日本の旅情 旭川」(『丘の上の邂逅』所収):

わたしは、小説『氷点』の中に、見本林という松林をいく度か書いた。その見本林をみるために、春、夏、秋、冬、そして夜、昼、朝と、何十回となくこの林を訪れてみた。(中略)
しかし、冬の見本林を訪れたある日、わたしはその樹氷のみごとさにことばもなかった。針葉樹のあの一本一本に霧華がキラキラと輝き、林全体がガラスか水晶でできているような、そんな印象であった。林の中のまっ白な雪の上には、松葉がわずかに散っていて、その雪の上に、何十羽のまっ黒いカラスが死んでいた。寒さのために、カラスの命も凍えてしまったのであろうか。そのカラスを踏まないように気をつけながら、ドイツトーヒの林の中にはいっていくと、雪の見本林は明るく、清々と、そして寂しかった。

(3)失ったものを思い起こさせるもの

『続氷点』:
宿から流氷の上を歩くカラスを目撃した陽子は、「あのカラスにさえ、両足がある」と北原が失った足のことを思う。

(4)
『積木の箱』:
・常盤公園で奈美恵と話していた一郎は、たくさんのカラスが公園の木々の上に群がっているの見る。二人で話している様子を悠二に目撃され、声をかけられる。(くもり日)