integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

紫烟荘(しえんそう)

紫烟荘は実在した喫茶店である(現在はない)。
1932(昭和7)年最初の経営者で札幌喫茶界に名をとどめる下山純護が札幌市南三条西四丁目に開業。
1969(昭和44年)閉店、その時の経営者は飯島富雄。
場所は、現在でいうと札幌市中央区南三条西四丁目にある「シルバービル」(雑居ビル)。札幌駅前通に面し、千秋庵のビルの斜め向かいにある。
三浦作品では『ひつじが丘』にコーヒーがおいしい店として登場する。また、渡辺淳一の『阿寒に果つ』の舞台でもある。

【調査経緯】
地元の図書館にレファレンスを依頼する前に、以下のサイトを発見。

札幌文化系コラム「011 ひつじが丘」(circled.2015/8/3)
http://www.h6.dion.ne.jp/~romandou/011_hitujigaoka.html

「紫煙荘」は、昭和7年に開店した老舗の喫茶店で、長く営業を続けていたが、昭和44年に閉店したという記述あり。


地元の図書館の方に以下の資料を取り寄せていただく。
和田義男著『札幌喫茶界昭和史』(沖積舎、1982=昭和57年12月1日)により、次のことが分かった。

・最初の経営者、下山純護が 四丁目十字街仲小路の入口近く麗(ウララ)という店をひらいた。
・麗(ウララ)から白百合そして紫烟荘(昭和七年)と転じ、南三条西四丁目のその店は一度は人手に移って、〝花柳〟という高級呉服の店になっていたが、これを買い戻して再び紫烟荘を開店した。
・昭和四十四年、その歴史に終止符うって、紫烟荘が街から永遠に姿を消した頃、経営は飯島富雄に移っていた。

※『札幌喫茶界昭和史』の初出は「月刊さっぽろ」1971(昭和46)年1月号~2年間にわたって連載。

札幌喫茶界昭和史 (1982年)

札幌喫茶界昭和史 (1982年)

  • 作者: 和田 義雄
  • 出版社/メーカー: 沖積舎
  • 発売日: 1982/12
  • メディア: -


地元図書館にレファレンス依頼するのと並行して、以下のサイトも発見した。

知人から「月刊おたる」関係者?のサイトに以下の記事があったと教わった。(circled.2015/8/4)http://homepage2.nifty.com/tamagawakaoru/200206.html

和田由美の日々雑記(circled.2015/8/5)
http://wada.alicesha.co.jp/?day=20140313

以下の記述あり。
・黒澤監督の映画「白痴」(昭和26年)の中に「紫烟荘」(南3西4)が登場。
・駅前通りに面して東向き、今の千秋庵本店の斜め向かいにあったらしい。


より詳しいことを調べるために北海道立図書館にレファレンスを依頼。
2015年8月23日付で回答をいただいた。回答を転載することを道立図書館の方に承諾を得ています。

【回答事項】
ゼンリンの住宅地図で建物の変遷を確認しました。
 ・『ゼンリンの住宅地図 札幌市 '69』(一番古い住宅地図)
   →p25:中央区南3西4のブロックに「喫茶紫烟荘」を確認
 ・『ゼンリン住宅地図 札幌市中央区 201411』(最新)
   →p47右:「シルバービル」(雑居ビル)になっている。札幌駅前通に面し、千秋庵ビルの斜め向かいにある。

「紫烟荘」の記述、写真がある資料は以下のとおりです。
 ・『さっぽろ喫茶店グラフィティー』(和田由美著)
   →p98「渡辺淳一さんの小説『阿寒に果つ』の舞台となった「紫烟荘」(南4西4)」※(南4西4)は引用ママ
 ・『紫烟荘 第一号』(1冊のみ所蔵)
   →p1:「編集人・古屋六朗」「発行人・下山忠次郎」「発行所・株式会社紫烟荘」となっているが、本文中に役職等の記載はなし
   →p4:「新設紫烟荘の階上サロン」と題した店内写真あり
 ・『札幌商工名鑑 昭和31年度版』
   →p243「第十八 サービス」に「(業種)喫茶 (名称)紫烟荘 (代表者)下山忠次郎 (住所・電話)南三、西四 2-0033」

この他、該当する年代の当館所蔵『東商信用録』も見ましたが、掲載はありませんでした。

また、写真が公開されていないか、以下のサイトでの検索を試みましたが該当はありませんでした。
 ・「札幌市公文書館所蔵資料検索」(http://archives.city.sapporo.jp/Culture/
 ・「札幌市中央図書館デジタルライブラリー」(http://gazo.library.city.sapporo.jp/
 ・「フォト海道」(道新写真データベース)(http://photodb.hokkaido-np.co.jp/

【回答資料】
 1 ゼンリンの住宅地図 札幌市 '69 / / 住宅地図出版社 / 1968
  /291.038/Z/3/1102181433
 2 ゼンリン住宅地図 札幌市中央区 201411 / / ゼンリン / 2014.11
  /291.038/Z/H26/1111307789
 3 さっぽろ喫茶店グラフィティー /和田 由美著 / 亜璃西社 / 2006.1
  /673.9/SA/1108602622
 4 紫烟荘 通巻1号 / / 紫烟荘 / 1957年
  /Z113/1207423532
 5 札幌商工名鑑 昭和31年度版 /札幌商工会議所/ 1956
  /670.35/SA/S31/1103520019

道立図書館の方のレファレンスを基に、『さっぽろ喫茶店グラフィティー』を相互貸借制度を利用して借り、p98を確認。「渡辺淳一さんの小説『阿寒に果つ』の舞台となった「紫烟荘」(南4西4)」とあるが、紫烟荘のマッチラベルがこの本の表紙にあり、そこには南3西4とあるので、誤記と思われる。


 

『ひつじが丘』:昭和25(1950)6月14日、札幌の宵宮祭のときに、良一が奈緒実を誘う。「落ち着いた小さな店」で良一は「この店はコーヒーがうまいんですよ」と教え、その後奈緒実に「好きなんだ」告白する。

『道ありき』(二三):1950(昭和25)年(28歳)、6月、正と共に北大病院で診察を受ける。その際、堀辰雄の『菜穂子』を古本屋で買ってもらう。扉には、正の字が記されており、「モカコーヒーを飲みつつ/札幌紫烟荘にて/正 記す」とある。