integral:三浦綾子資料室

作家・三浦綾子に関する研究をするブログ。※予告なしに記事の修正削除およびURLの変更を行います。

『三四郎』

 夏目漱石の小説。初出は「朝日新聞」(東京・大阪共)に連載。期間は、明治41年9月1日から12月9日まで、全百十七回にわたる。明治42年5月春陽堂より刊行。熊本から東京に出てきた青年・三四郎は東京で学生生活を送る。故郷、学問の世界、恋と青春の世界の三つの世界が自分にできたことを発見する。三四郎は美しく勝気な里見美禰子に心引かれるものの、美禰子に振り回され、彼女は聖書の言葉を残して他の男の元に嫁ぐ。

『漱石全集 第五巻』(岩波書店、一九九四年、四月)所収、『三四郎』四の一六、p387にサヾーンの脚本の中にある「Pity's akin to love」を与次郎が「可哀想だた惚れたつて事よ」と訳す場面がある。これは、後述のとおり、『続氷点』で使われる。また、五の九終り、p417で、三四郎に美禰子が「迷子の英訳を知つて入らしつて」「教えてあげませうか」「迷える子(ストレイ、シープ)――解つて?」とある。

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『ひつじが丘』:
羊が丘で沢山の羊を見ていた奈緒実が、竹山に「先生。漱石の『三四郎』をお読みになって?」と問いかけ、「あの中に、迷える小羊という言葉がでてきますわね」「ああ、美禰子がいくどか三四郎の前でつぶやいた言葉ですね」「ええ、そうですわ。今こうしてひつじが丘に来て、沢山の羊を見ていますと、ストレイシープということばが思い出されてなりませんの」という。→c.f.羊

『続氷点』:
・松崎由香子のことを説明した啓造は、由香子のことを「ただ、かわいそうだと思うだけだよ」と高木に言う。そのときに高木が口にした言葉。「ふん、かわいそうとは、ほれたってことよ、とかいうせりふがあったな」(サロベツ原野)
・啓造は、高木が口にした漱石の名訳「かわいそうだた、惚れたって事よ」を思い出しながら「男はかわいそうな女に、心を動かされるのだ」と思う。(夜の顔)