integral:三浦綾子資料室

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氷点・続氷点:三井恵子(みついけいこ)

三井恵子(みついけいこ)

陽子の本当の母。年齢不祥。陽子を生んだ頃は30代だったか。年齢不祥。陽子の父・中川光夫との不倫の末、陽子を妊娠。姦通罪のあったこの頃、困った二人は高木に相談。高木の知り合いの産院で陽子を産むが、陽子が生まれる半月前に中川が急逝したため、陽子は孤児院にあずけられることとなる。

『「氷点」を旅する』に収録されている「三浦綾子がつづるあらすじ」には、「陽子によく似た四十年輩の美しい女性」「小樽の海産物問屋の婦人」とある。

(1)陽子を三十歳代にしたような、陽子そっくりの女性

(2)記述なし

(3)記述なし

恵子/三井恵子(みついけいこ)  

「陽子のおかあさん」「小樽のあのひと」「陽子の母」「小樽の人」「小樽のひと」「うちのお袋さん」とも表記。

小樽在住。息子が二人(陽子の異父兄と異父弟)がいる。夫が出征中に札幌の実家に帰宅。その実家の下宿人だった、知人の息子・中川光夫と愛しあうようになる。
小樽を訪問した徹は、恵子の隣りに住むたばこ屋の娘にいろいろ探りを入れると、弥吉との夫婦仲はとてもいい。
高木の母の通夜の際、徹は陽子のことを恵子に告げるが、徹と別れた直後、恵子は交通事故に遭い膝関節骨折で三カ月の入院を要する。

陽子は、日記に「わたしを産んだ小樽の母(こう口に出し、且つ書く時の、わたしの内に起きる、いいようもないためらいや抵抗を誰が知ろう)はみにくい」と記す。

ぶどうが好物。徹が、見舞いにマスカットを持っていったら「わたしぶどうが大好きなのよ」と語る。

(1)たばこ屋の娘に聞いたところによると、美人で有名。「大学を出た息子さんがいるのに、とてもそんなに見えない」。高木の母の通夜で、徹は恵子を見るが、その時次のように感じる。「目鼻立ちは陽子によく似ていたが、感じは全くちがっていた。陽子の、あの澄んだ深さは、恵子にはなかった。ベールを透かして見るような、何か妖しい美しさがあった」。また、階段を上って行く姿に「トルストイのアンナ・カレーニナ」を連想し、話しかけた際の声は「陽子によく似ていた。幾分鼻にかかったうるおいのある声」だとする。徹から、潔や達哉が陽子を見たことを知った恵子は、「わたしとあの子が似ているということ、やっぱり天罰ね。自分では、万事かくしおおせたつもりだったけど、そんなに似ている生きた証拠があっては、もう、どうしようもないわ」と語る。

 北海道大学で陽子に再会した達哉は「しかしね、ぼくにしてみると、ちょっとしたミステリーなんだ。顔ばかりか体つきや歩き方まで、似てるんだからね。こうして話していると、声も似ているよ」と語る。

 高木の家で恵子に会った啓造は「何と快い微笑を見せる女性だろう。このあたたかい微笑には、誰もが抗しきれないのではないか」と思うが、「恵子の持つふんいきの中に、何か妖しい甘美なものがある」と落ち着かない。

 潔によると、恵子の兄(潔から見れば伯父)は、恵子に似ていたので、最初陽子を伯父の娘だと考えた。しかし年齢が合わないことから、この説を打ち消し、達哉と陽子が双生児ではないかと考えたことを陽子に打ち明ける。

 辻口家を訪れた際の恵子について、夏枝は「車からの降り方、二、三歩歩んだその歩み方、頭の下げ方、一つ一つが洗練されていた」と「気圧される」思いになる。また、「蠱惑的ななまざしや、ばら色の頬」を思って少しいらいらする一方で、達哉と陽子のことで狼狽する恵子の「黒く長いまつ毛と、蠱惑的な目を眺めて、意地悪い喜び」を感じる。

 陽子は、初対面の恵子について「優雅なしぐさ」に反発を抱く。また「長いまつ毛をあげ、恵子はやさしく微笑して」自己紹介をするが、このときの恵子について「この人は、歯ならびまで、わたしに似ている」と感ずる。

(2)たばこ屋の娘によると「親切だし、とてもいい人。誰だってあの奥さんを見たら好きになるわ。好きにならない方が、おかしい」「(ご主人は)奥さんとはくらべものにならない」。

徹から陽子のことを聞いた恵子は、自身を「ほんとうにひどい女」だと言い、自身の生活を「いい加減」と評し、己の非を素直に認めた。徹は、何一つ弁解しない恵子の性格を「陽子にあるあの性格によく似ていた」と感じる。高木の家で、恵子は啓造に「辻口さん、罪を犯すって、恐ろしいことですわ。わたしは夫を裏切ったために、かくしつづけなければならなかったでしょう。つまり、だましつづけているわけでしょう? 性格がどこか歪んでしまいましたわ。心がいつもにごっている、不透明な人間になりましたわ。一つの罪は、さらに自分の心の中に、罪を呼ぶのでしょうね。そして育てるのでしょうね。恐ろしいことですわ」と語る。

(3)「でもね、辻口さん。事項は法律上の問題よ。良心に時効があってはならないと思うの」(交差点)