integral:三浦綾子資料室

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太宰治『斜陽』

 『大辞泉』(増補・新装版)によると、以下の通り。

しゃよう【斜陽】シャヤウ 太宰治の小説。昭和二二年(一九四七)発表。第二次大戦後の没落貴族として伊豆の山荘で母と暮らす娘かず子の、古いものへの反逆と心情を描く。

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『氷点』:辰子の家に行くと言いつつ、実際にはそうでなかった陽子に対し、夏枝は誰と過ごしていたのかを問いただす。陽子は「おかあさん、太宰治の『斜陽』をお読みになった?」「『斜陽』にひめごとを持っているのは大人のしるしと書いてあったの。陽子も大人になったのね。ノーコメントよ、おかあさん」と答える。(『氷点』雪の香り)

※太宰治の『斜陽』にある「ひめごと」は三例。「大人のしるし」はなし。
参照:青空文庫太宰治 斜陽
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1565_8559.html circled.2012/11/26

「お母さま、私ね、こないだ考えた事だけれども、人間が他の動物と、まるっきり違っている点は、何だろう、言葉も智慧(ちえ)も、思考も、社会の秩序も、それぞれ程度の差はあっても、他の動物だって皆持っているでしょう? 信仰も持っているかも知れないわ。人間は、万物の霊長だなんて威張っているけど、ちっとも他の動物と本質的なちがいが無いみたいでしょう? ところがね、お母さま、たった一つあったの。おわかりにならないでしょう。他の生き物には絶対に無くて、人間にだけあるもの。それはね、ひめごと、というものよ。いかが?」
(略)
「ああ、そのかず子のひめごとが、よい実(み)を結んでくれたらいいけどねえ。お母さまは、毎朝、お父さまにかず子を幸福にして下さるようにお祈りしているのですよ」

べつに何も、上原さんをすきでなかったのに、それでも、その時から私に、あの「ひめごと」が出来てしまったのだ。かたかたかたと、上原さんは走って階段を上って行って、私は不思議な透明な気分で、ゆっくり上って、外へ出たら、川風が頬(ほお)にとても気持よかった。